53.はじめての”さくら”を見る
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  53.はじめての”さくら”を見る
 
桜が咲き始め、初めて見る“さくら”を猫たちは…

「これがさくらの花なのね。」

見上げながらキジコが言った。白玉も見上げながら言った。

「父さんと母さんが言うように特別には…」

「そうね特別ではないけど、暖かくなって桜の花が開くとても気持ちのいいものよ。」

シロちゃんがうれしそうに見上げながら言った。

「もっと花が開くと、うすいピンクの花の木になりとても綺麗なんだよ。花びらが散り始めるとピンクの絨毯を敷き詰めたようになるんだ。」

タマもうれしそうに話した。子猫達にはあまりイメージがわかないようだ。

「暖かくなって、遊ぶのに気持ちいい季節はうれしいけどね。」

キジコが木を見上げながら、

「よくわからないわね…」

「僕もそう思う。」

ハチが答えた。遊びたい盛りの猫達は、花よりも“楽しく遊べる事”の方が大事のようだ。

翌日、本日も晴れて気持ちのよい日を迎えていた。ハチは庭の塀に登り、高い所からの眺めを楽しんでいた。

「ハチ!」

誰かが呼んでいる。

「ハチ、ハチって名前だよね。」

塀の下を見ると、一匹の犬が座りこっちを見ている。

「君は…」

ハチは驚いた。

「君は、コリキだよね。」

公園での出来事がよみがえってきた。急いで逃げようとすると、

「待ってハチ。ごめんね、君たちを驚かせてしまって。」

ハチは振り返った。

「君たちを驚かせたくて公園に行ったんじゃないんだ。仲良くなりたくて…」

「どういうことなの?」

「おじさんはあまり散歩に連れて行ってくれないんだ。君たちがいつも楽しそうに公園へ行くのを見いていて僕も行きたくて、おじさんの目を盗んで家を抜け出していたんだ。」

「みんな、君が暴れ者で近づくと危険だって、人も君を警戒しているよ。」

コリキは悲しそうな顔をした。

「抜け出すと、みんな大騒ぎになって僕を捕まえようとするから、つい吠えてしまうんだ。」

ハチは、コリキのおかれている環境に驚いた。

「今日も抜け出してきたんだよね、大丈夫?」

「うん…。友達になってくれないか?」

ハチは困ったて答えに迷った。

「また抜け出して来るよ、ハチ考えといてくれよ。」

そう言うとコリキは帰って行った。帰る姿を見送った。

「どうしよう…コリキの言うことが本当ならかわいそうだな。また抜け出してくるのかな。」

ハチは塀の上で座りなおしてぼんやり考えた。見上げると桜の花が、昨日より多く咲いているのが分かった。
                        
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